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トップニュース 「製薬協メディアフォーラム」を開催 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2023-2027 —そのポイントと今後の対応—

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製薬協国際委員会グローバルヘルス部会では、日本における薬剤耐性(Antimicrobial Resistance、AMR)に対する新規抗菌薬開発を促進する施策の実現に向けて、AMRにかかわる諸問題と対策について広く国民のみなさんにご理解いただくための活動に取り組んでいます。2023年6月28日、ベルサール東京日本橋(東京都中央区)にて「製薬協メディアフォーラム」を開催しました。当日は会場、オンライン参加を併せて、15社19名のメディア関係者の参加がありました。

講演の様子 講演の様子

はじめに

2023年4月に内閣官房(国際的に脅威となる感染症対策の強化のための国際連携等関係閣僚会議)から「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027)」が発表されました。これは2016年に発表されたAMR対策アクションプラン(2016-2020)に続くものです。

今回開催した「製薬協メディアフォーラム」では、アクションプランの改定を取りまとめた内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室内閣審議官の大西友弘氏、感染症学の第一人者である東京大学医科学研究所・先端医療研究センター教授の四柳宏氏、製薬協国際委員会感染症グループの有吉祐亮リーダーによる、今回のアクションプランの「改訂のポイント」「医療従事者の視点」および「製薬企業の視点」についての講演を行いました。その後のパネルディスカッションでは、製薬協国際委員会の俵木保典委員をファシリテーターとし、アクションプランの目標の一つでもある国民への啓発や普及について活発な議論が交わされました。本フォーラムを通じて、今後のAMRに関する必要な対策や産学官の連携、国際連携の必要性等について、メディアの方々に理解を深めていただきました。

■講演1

薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン改訂のポイント

内閣官房 新型コロナウイルス等感染症対策推進室 内閣審議官 大西 友弘 氏                  

本講演では、2023年度公開された薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの改訂のポイントについて解説がありました(図1)。2023年5月に日本で開催されたG7広島サミット2023における、G7長崎保健大臣宣言やG7広島首脳コミュニケにおいてもAMR対策が明記され、首脳レベルでもAMRが大きな問題の一つとして認識されている点も指摘されました。

図1 薬剤耐性(AMR)対策アクションプランとは
図1 薬剤耐性(AMR)対策アクションプランとは

新しいアクションプランでの新規・強化の取り組みは次のようになります(図2)。まず、医療の分野では、「院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)」と「感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)」の強化が挙げられました。2つ目は、畜産分野に加えて、養殖水産分野および愛玩動物分野の薬剤耐性動向調査を強化し、併せて感染予防・管理の観点から家畜用、養殖水産動物用および愛玩動物用のワクチンや免疫賦活剤等の開発・実用化の推進を計画していることが挙げられました。3つ目は、「抗微生物薬適正使用の手引き」の更新で、内容の充実および臨床現場での活用の推進を図ることが挙げられました。最後に、「抗菌薬確保支援事業」による新たな抗微生物薬に対する市場インセンティブ(プル型インセンティブ)の仕組みの導入で、上市後の抗微生物薬による収入額が一定額に満たない場合、その差額を国が支援することを検討している旨が紹介されました。

図2 主な新規・強化取組事項等
図2 主な新規・強化取組事項等

■講演2

医療従事者の視点から

東京大学医科学研究所・先端医療研究センター 教授 四柳 宏 氏                        

本講演では、アクションプランで設定された6分野の目標の中で、特に医療従事者との関係が深い、感染予防・管理、ならびに抗微生物薬の適正使用について幅広い視点から説明がありました。予防や管理の観点では微生物叢[1]がヒトだけでなく、動物や環境とも共有されており、特に家畜において生じた耐性菌は食肉や卵、乳製品等を介してヒトの体内にもち込まれることから、ヒトのみならず、家畜を含む動物や環境も含めたワンヘルスとしての対策の必要性が紹介されました。抗菌薬の投与により細菌叢※1のバランスは容易に崩れ、かつ元に戻るには時間を要することが理解されました(図3)。

  • 1
    微生物叢(びせいぶつそう)、細菌叢(さいきんそう):生きた微生物、細菌の集合

図3 広域抗菌薬を1週間投与した場合の腸内細菌叢変化
図3 広域抗菌薬を1週間投与した場合の腸内細菌叢変化

適正使用の観点からは、その重要性がまだ十分に理解されていないとして「抗微生物薬適正使用の手引き」において医療の最前線の診療の場において抗菌薬使用の判断が短時間で行えるよう、また患者さんやご家族への説明に使用できるよう、フローチャートが準備されていること等の紹介がありました(図4)。また、適正使用が続いていても一定の頻度で耐性は生じることから、新たな抗菌薬が必ず必要になるとして、通常のビジネスモデルに当てはまらない抗菌薬の領域には財政支援が必要であり、世界的な課題として開発に必要なインセンティブの支援を各国で協力して負担していくfair shareの重要性等が述べられました。

図4 抗微生物薬適正使用の手引き
図4 抗微生物薬適正使用の手引き

■講演3

製薬企業の視点から

製薬協 国際委員会 感染症グループ 有吉 祐亮 リーダー                           

本講演では、アクションプランで設定された6分野の目標の中で製薬企業に関連の深い、研究開発・創薬促進、国際協力に関して説明がありました。

研究開発・創薬促進では、産学官連携の推進について、AMRを含む感染症に特化した取り組み事例の紹介と、製薬協全体の活動である政策提言2023の取り組みを説明し、産学官連携の重要性について示しました。世界各国で耐性菌の脅威への対策が迫られている中、製薬企業が新しい抗菌薬の開発に投資できない理由について、抗菌薬領域における市場メカニズムの課題を説明され、プル型インセンティブ「抗菌薬確保支援事業」に対して、適正使用と開発促進のどちらの側面も満たす制度となるよう検討を進めてほしいと期待を述べました(図5)。

図5 抗菌薬は市場メカニズムに課題があり、新規抗菌薬の創製が困難
図5 抗菌薬は市場メカニズムに課題があり、新規抗菌薬の創製が困難

国際協力では、製薬産業界として発信したG7広島サミット保健アジェンダに関する提言の骨子と、製薬業界等により設立されたAMRアクションファンドや個社の国際連携の取り組み事例の紹介がありました(図6)。社会的責任や使命を果たすにも本業の創薬が安定していることが不可欠であり、研究開発費の確保が生命線であることを踏まえ、制度設計等を含めて産学官の連携により、この大きな社会課題に対峙したいと述べました。

図6 国際連携 製薬企業の取り組み
図6 国際連携  製薬企業の取り組み

■パネルディスカッション

ファシリテーター:製薬協 国際委員会 俵木 保典 委員                                         

本セッションでは、産学官に共通するアクションプランの目標である普及啓発・教育について、講師3名を交えて議論しました。これまで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響でさまざまな制限がありましたが、2023年は政府が定める11月のAMR対策推進月間にイベント等を行い、産学官が連携して取り組むことで国民の理解が進むことへの期待が確認されました。

医療の現場では各医療機関で医療チームとして対応にあたることの重要性や、学会としてはさまざまな手引きの作成を進めていくことの必要性等が指摘されました。また、今般のCOVID-19の治療において、医療現場での抗菌薬の適正使用を実践してきたことも重要な経験として、今後に活かすことができます。AMRの認知度を今いっそう上げるためには、COVID-19を機に高まっている感染症への関心が維持されている今のうちに、農家、畜産関係者等を含め、広い裾野の人々を対象とするアプローチに加え、特定層に絞ってアプローチすることが有効だと思われます。一般の方々への普及に関するメディアの役割への期待も共有されました。

質疑では、抗菌薬の適正使用が進んでいるにもかかわらず、耐性菌が必ずしも減少していないことを背景に、医療機関のみでの対策では不十分であり、動物や環境を含めた幅広い対策の必要性、さらには日本の対策だけでは意味がなく、グローバルに取り組むことの重要性等が確認されました。

パネルディスカッションの様子 パネルディスカッションの様子

結び

COVID-19のパンデミックを機に感染症に対する関心が高まり、適切な新薬が開発される環境や準備を進めておくことの重要性等の理解が進みましたが、危機感が薄らぎつつある今こそ、サイレントパンデミックともいわれるAMRへの対策の重要性を改めて訴えていく必要があります。

製薬協では、一般の方々も含め、AMR対策の普及啓発を目的とした活動を幅広く行うとともに、企業の抗菌薬の研究開発への投資を促すために必須であるプル型インセンティブの付与、国際的枠組みの制度整備等、AMR問題への取り組み強化を国に対して求めるアドボカシーを行ってまいりました。アクションプランが発表されたのを機に、今回のセミナーを通じて、メディアの方々には、AMR問題の背景と現状、感染症の最終的な武器となる新規抗菌薬の開発の必要性等、幅広い課題について広くご理解いただくことができたと考えます。われわれは、今後もグローバルな包括的視野をもちつつ、本課題への取り組み強化に向けて、さまざまな活動を産学官で連携して進めていきます。

(国際委員会 グローバルヘルス部会 渡辺 剛史酒井 俊明中野 今日子

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